東京地方裁判所 平成5年(ワ)19033号 判決 1994年7月26日
原告
久保典子
被告
西澤秋夫
主文
一 被告は、原告に対し、金二一〇三万二八四六円及びこれに対する平成二年一〇月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、被告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
一 原告は、「被告は、原告に対し、金二二九三万〇五九七円及びこれに対する平成二年一〇月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、次のとおり請求の原因を述べた。
「1 事故の発生
(1) 原告は、左記事故により負傷した。
事故の日時 平成二年一〇月一四日午前九時一〇分ころ
事故の場所 東京都大田区蒲田本町二丁目二〇番一一号先交差点
加害者 被告(加害車両運転)
加害車両 普通乗用自動車(品川三三ぬ八八三三)
被害者 原告(被害車両運転)
被害車両 原付一種自転車(品川区せ二二五五)
事故の態様 被告が加害車両を運転して、蒲田方面から雑色方面に向けて時速約七〇キロメートルで進行し、前記交差点にさしかかつたところ、同交差点の右方から明らかに先入して左方に横断しようとしていた被害車両に衝突し、原告を被害車両もろとも前方に跳ね飛ばした。
事故の結果 原告は、頭部挫傷等の傷害を負つた。
(2) 原告は、東邦大学医学部付属大森病院に、平成二年一〇月一四日から平成三年一月二五日まで入院し、翌二六日から平成五年二月八日まで通院した(実治療日数五六日)。
(3) 原告は、左動眼神経麻痺、近視性乱視、歯牙脱臼欠損、精神機能障害、聴覚障害の後遺症を残し、自賠責等級八級に認定されている。
2 損害賠償請求の根拠
被告は、加害車両を保有しているところ、前記交差点に減速して進入すべき義務があるのに、これを怠り、漫然加害車両を進行させたことにより前記の事故が発生したから、民法七〇九条及び自賠法三条により原告に生じた後記損害を賠償すべき義務を負う。
3 本件事故による損害額
(1) 治療関係費
<1> 治療費(東邦大学医学部付属大森病院分) 二一六万一四六二円
<2> 付添看護費(原告の祖母久保ツルエが入院期間一〇四日の毎日付添いした。一日当たり五〇〇〇円として計算) 五二万円
<3> 入院雑費(一日当たり一二〇〇円の一〇四日分) 一二万四八〇〇円
<4> 診断書料 二万七八一〇円
<5> 通院交通費 一三万一〇九〇円
(2) 逸失利益 二一八二万五八九五円
原告は、本件事故のため、前記の後遺障害を残し、このため、労働能力が四五パーセント喪失した。そして、原告は本件事故当時一七歳の高校生であり、高校卒業後六七歳に達するまで稼働が可能であるから、平成二年賃金センサス女子労働者学歴計年収二八〇万三〇〇〇円を基礎とし、ライプニツツ方式により中間利息を控除すると、本件事故による逸失利益は右金額となる。
計算 280万3000×0.45×17.3036=2182万5895
(3) 慰謝料 一〇〇〇万円
原告は、本件事故のため、高校生活を中断して東邦大学医学部付属大森病院に入通院したが、脳機能に障害が残り、躁欝病のような状態が続き、就職先がなく、自宅待機を強いられている。また、原告の母は、本件事故や勤務先の倒産などのため、生活に追われ、多額の借金を抱え込み、自己破産を申し立てた。他方、被告は、任意保険に入つておらず、被害の賠償にも全く誠意がない。そこで、原告の受けた精神的痛手等を慰謝するには、入通院(入院三カ月、通院一五カ月)慰謝料として三〇〇万円、後遺症慰謝料として七〇〇万円が相当である。
(4) 弁護士費用(請求額の約一割として算定) 二〇八万円
4 損害の填補等
原告は、自賠責保険から八七〇万円の填補を受けた。
また、本件事故については、原告にも過失があるが、その割合は、原告二割、被告八割である。
よつて、原告は、被告に対し、3の(1)から(3)までの合計金から4の八七〇万円を控除した金額の八割の範囲内の金額である二〇八五万〇五九七円に3の(4)の金額を加えた合計損害金二二九三万〇五九七円及びこれに対する本件事故の日である平成二年一〇月一四日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。」
二 被告は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しないから、請求原因1ないし3の事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。
三 右の事実によれば、原告の本件交通事故により被つた損害の額(弁護士費用を除く。)は、三四七九万一〇五七円であるところ、原告は、本件事故について原告にも過失があり、その割合は原告が二割であること及び原告が自賠責保険から八七〇万円の填補を受けたことを自認しているから、過失相殺後の損害額は、二七八三万二八四六円であり、自賠責保険からの填補額を控除すると、一九一三万二八四六円となる。そして、本件の事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑み、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、金一九〇万円をもつて相当と認める。
四 よつて、原告の本件請求は、被告に対し、金二一〇三万二八四六円及びこれに対する本件事故の日である平成二年一〇月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。なお、訴訟費用の負担については民事訴訟法九二条ただし書を、仮執行宣言については同法一九六条一項をそれぞれ適用した。
(裁判官 南敏文)